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夏至(国立天文台)


夏至について → 国立天文台(NAOJ)より以下引用。写真は、国立天文台三鷹キャンパスの中央棟前に立つ日時計。夏至を控えた6月上旬、太陽が南中する頃の一枚。(クレジット:国立天文台)


夏、到来。

気象学的には、6月から8月までが夏と呼ばれる期間。これから盛夏がやってきます。一方で、「暦の上では」と言われるように、日本では、明治になるまで使われていた太陰太陽暦の季節を引き継いだ伝統的な季節の概念も名残をとどめています。かつては立夏の候から立秋のころまで、旧(ふる)い月名の四月から六月まで(現在の5月から7月ころ)が夏と呼ばれました。二十四節気において五月の中気(注)であった夏至は、まさに夏の中央だったのです。2021年の夏至の日は、6月21日。


人類と太陽

夏至は、一年間の太陽の動きの中で特徴的なタイミングであるため、先史時代から意識されていました。ヨーロッパなどで紀元前4000年ころから建設された巨石遺跡の中には、夏至のころの日の出や月の出の方角を重視したと推論される遺構も複数見られます。グレートブリテン島(英国イングランド地方)にあるストーンヘンジは、中でも有名でしょう。夏至が古くから知られてきたことは、人類が歴史の中でずっと太陽などの天体の運行を注意深く調べ、深い考察を向けてきたことの表れです。日本でも、日時計の機能を有したと見られる縄文遺跡が発掘されています。

国立天文台三鷹キャンパスの本館前に立っている日時計は、太陽の観察が天文学の原点と言えることを、象徴しているようにも思えます。


夏至に起こること

日本から見た夏至の日の太陽の動きを考えてみましょう。次の中で、夏至の日に起こる出来事はどれでしょうか。

(1)昼(日の出から日の入りまで)が最も長くなる

(2)日の出の時刻が最も早くなる

(3)日の入りの時刻が最も遅くなる


正解は(1)で、東京の緯度(北緯35度)では昼の長さが14時間35分、最も短い冬至と比べるとおよそ5時間もの違いがあります(なお、(2)、(3)が起こるのはそれぞれ夏至の10日ほど前、そして後のことです)。

昼の長さが変化するのは、太陽の南中高度が変化し、高く昇るほど空を横断する経路が長くなるため。そして南中高度が変化するのは、地球の自転軸が傾いているため。このことは、ご承知の方が多いでしょう。夏至においては、自転軸の北極側が太陽の方向に傾き、地球上から空を見上げると太陽が一年間で最も北側を通ります。


真上を通る太陽

太陽がどんな高度に見えるかは、その土地の緯度によって決まります。夏至の日、北緯35度39分の東京における太陽の南中高度は約77.8度。同じ日、「北回帰線」に迫る北緯24度に位置する石垣島天文台では、ほとんど真上(天頂)から太陽が照りつけます。すばる望遠鏡があるハワイ島は北回帰線よりも南の北緯20度。太陽は天頂を越えて、北側から照らすようになります。夏至を挟んで5月と7月の年に2度、太陽が天頂を通過するタイミングを、ハワイ現地では「ラハイナ・ヌーン」と呼ぶのだそうです。国立天文台の施設として最も南にあるのは、チリのアルマ望遠鏡。赤道を大きく超えた南半球では、この日太陽は北の空の一年で最も低いところを通過し、これから冬本番を迎えようとしています。


紀元前3世紀ころのギリシャ人の学者は、夏至の日の太陽が作る影の長さを離れた二地点で測り、それらが緯度によって異なることを利用して、地球の大きさをかなりもっともな数値で計算したと伝えられています。古代の天文学者が描き出した丸い地球上の各地で、異なる高さの太陽を見上げながら、現代の天文学者が宇宙への探求を引き継いでいます。

(注)太陰太陽暦(旧暦)で季節変化を表す指標として用いられた二十四節気(にじゅうしせっき)は、1年間の太陽の黄道上の動きを視黄経の15度ごとに24等分して決められる。冬至・夏至・春分・秋分を含む偶数番目のグループを中気(あるいは中)といい、それを含むことで月名が決められた(夏至=五月中)。

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